見えない恐怖：スマートフォンに映るもう一つの世界

日常と異界の境界線は、意外にも薄い。それを教えてくれたのは、古ぼけたスマートフォンだった。

私はある日、ふと立ち寄ったアンティークショップで、中古のスマートフォンを手に入れた。このスマートフォンには、不思議なアプリがインストールされており、「別の世界」を見せるという。

最初は興味をそそられ、アプリを開いた。画面に映るのは日常の風景。だが、よく見ると、現実には存在しないぼんやりした人影や、奇妙な物体が映り込む。このアプリを通じてのみ見える「もう一つの世界」。心躍るような発見だったが、同時に不安が芽生え始めていた。

日々、この世界に引き込まれるにつれ、私の心は恐怖で満たされていった。画面越しの存在たちが、私の生活に影響を及ぼし始めたのだ。夜、眠ろうとすると、画面の中から聞こえるかすかな囁き。朝、目覚めると、スマートフォンの画面に映る私の部屋に見慣れぬ影が…

友人に話しても、彼らには何も見えず、私の話を信じる者はいなかった。孤独と恐怖が、日々私を苛む。

そして、ある晩、事態は急変した。画面には私の部屋がはっきりと映し出され、その中に別の「私」がいる。画面の私は、ゆっくりとこちらを見て微笑んでいた。その微笑みは、どこか人間離れしており、見るものを凍りつかせた。

その瞬間、私は気づいた。このスマートフォンはただの媒体ではない。それは、知られざる世界との接点であり、そこに住む者たちが私を見つめているのだ。

恐怖に駆られ、スマートフォンを手放したが、すでに遅かった。私の世界は、既に不可解な影に飲み込まれていた。画面の向こうの世界は、私に見えなくとも、いつも私のそばにある。

これは警告だ。便利なツールであるスマートフォンだが、それが開くのは、時に予想もしない世界かもしれない。私たちの知らないどこかで、何かが、いつも私たちを見つめているのだ。

そして、もしかすると、その視線は、私たちが気づかないうちに、私たちの世界にもう既に足を踏み入れているのかもしれない。